1人で勉強する意味は?物理を独学で攻略する方法

独学大学受験を目指している人にとって、物理は一番大きな壁である。

物理は独学で攻略することが困難な科目だとたびたび言われるためだ。

中堅校レベルであればなんとかなるだろうが、旧帝大や早慶というレベルになるとなおさら簡単な話ではない。

物理を独学でやるのはやめた方が良い、と言われたことがあるに違いない。

だが、そういうことを言う人の多くは「なぜ難しいのか」という疑問に答えない

独学で攻略することの問題・危険性を教えてくれないのだ。

逆に言えば、それらをしっかり把握しておけば、難関大の物理であろうと独力で突破することは十分可能だ。

今回は、独学で物理を学ぶための勉強法を説明する。

一般的に大変だと言われているが、それを乗り越えれば誰にも負けない物理力が手にはいる。

ぜひ以下の内容を実践して、確かな物理の力を身につけてほしい。

物理という科目の性質

多くの人は「物理は独学が難しい」というが、その根拠はなんだろうか。

物理がどういう科目なのかも踏まえつつ、「なぜ」にあたる部分を探っていこう。

物理とはどういう科目か

大学受験の物理、ひいては物理学というのは何を目的とした学問なのだろうか。

それを知るのは、正しい勉強法を見出す第一歩だ。

物理学が目指すのは、「少ない法則で多くの現象を説明する」ということである。

たとえば運動方程式を例に考える。

これは物体に働く力と質量、それに加速度の関係を示す式である。

斜面を滑り降りる物体、投射した球の運動、振り子の運動、…

運動方程式だけでも、多くの問題を解くことができる。

しかも運動方程式は単純な形をしており、汎用性が極めて高いことがわかる。

このように、形がシンプルであり、それでいて数多くの事象を説明できているという点で運動方程式は価値ある法則と言えるのだ。

もう一つの例として、万有引力の法則を考えよう。

2つの物体に働く力はで表すことができる。

この法則の優秀な点は、リンゴが落ちる運動も惑星の運動もこの式で説明できる、という点だ。

物体が落ちるときにしか使えない方程式よりは、万有引力の法則のように適用範囲が広いものが優れているに決まっている。

以上のように、物理学は

  • 少ない法則で
  • 可能な限り多くの現象を説明する

ということを目指している学問なのだ。

受験で物理を使う人はまずこれを理解しておこう。

実際の物理学者も、これと同様の理念を持っている。

たとえば筑波大学で生命環境の研究をしている奈佐原顕郎は次のように語る。

物理学を学ぶべき理由はたくさんあります。

(中略)

その顕著なものは、還元主義です。すなわち、ごく少数の法則が、多くの事象を、矛盾なく説明することができるし、そのような法則が世の中にあるはずだ、という考え方です。そして、そのような法則が見出されると、執拗にその正しさを、あらゆる実験事実に照らして検証します。そして、その法則に合わない「例外」を見つけた場合、その例外を許容するのではなく、その例外をきちんと説明することができて、なおかつもとの法則とも矛盾しないような、より包括的な法則を探そうと、執拗に努力を続けます。それが物理学の歴史です。

奈佐原顕郎のHPより

このように学者自身も、世の中の現象を「ごく少数の法則」で説明することを試みているのだ。

物理学自体がこのような性質を持っていることを、これから物理を学ぶ受験生は理解しよう。

覚えることは少ない

物理学が何を追求している学問なのかを説明した。

これを元に、受験生が理解すべきことは何かを考える。

上で述べたように、少ない法則で多くの現象を説明するのが物理学の役目だ。

したがって、登場する法則や方程式の数は当然少なくなる。

たとえば力学の分野では、問題を解く上で必要なのは運動方程式とあと数個の式のみである。

旧帝大や早慶を始めとする難関大学であっても、問題を解くのに要求される知識は数個の数式で表せてしまうのだ。

これがもし世界史であったら、人物名や事件の名前、それに文化史・政治史といった時系列もすべて暗記しなければならない。

そう考えると、覚える内容の量は圧倒的に少ないことがわかる。

暗記量が極端に少ない、これが物理の最大の特徴だ。

理解すべきこと

公式を暗記するだけなら正直1日もかからない。

ということは、物理で苦労するのは公式の暗記ではない、ということになる。

それは何かというと、「公式の意味・使い方」だ。

たとえば運動方程式の文字列を暗記することは極めて簡単だ。

文字にして4文字しか登場しておらず、小難しい英単語と比べれば圧倒的に単純であるためである。

だが、どういう問題でも適切に運動方程式を使える能力は、公式を暗記するだけでは身につかない。

のちに述べるが、徹底した問題演習が必要なのだ。

大学受験の物理で要求されるのは、公式の内容を覚えているか否かではなく、その公式を適切な場面で使って問題を解く能力なのである。

それも、個々の問題を個別のものとして扱う力ではなく、様々な現象を統一的に解き明かす視点だ。

上で例に挙げた運動方程式や万有引力の法則を見ればその意味がわかるに違いない。

独学の何が難しいのか

物理学の性質を見たことで、独学が難しい理由が見えてきた。

最大の困難は、統一的な視点を築くことなのである。

指導者がいない状態で受験生が物理を学ぶとなると、普通は何をやるだろうか。

たとえば地歴公民であれば用語の暗記、英語であれは英単語・文法の暗記をする人がほとんどだ。

それと同様、物理の始めの一歩を「公式の暗記」だと勘違いしてしまうのである。

ひどい場合は、書店に並んでいる「物理公式集」なるものを買ってそれの暗記を始めてしまう。

だが、それでは意味がないというのはここまで読んだ受験生なら容易に理解できること。

公式の文字列を覚えたところで物理学的には意味がない

その公式を使って物理現象を説明できて始めて物理学的な考え方が身についたと言えるのである。

独学だと公式の暗記に走ってしまいがちである。

これが、物理を独学するときの最大の落とし穴だ。

始めのうちは、公式を暗記するだけで解けてしまう問題もある。

だが全国模試や大学受験レベルになると、暗記だけでは太刀打ちできない問題が必ず登場する。

暗記で片付けられる科目ではないことをいまいちど認識しておこう。

もう一つは、どこでどういう法則を使えば良いのかというセンスが身につきにくい点だ。

たとえば2つの球が衝突する運動を考えよう。


<例題>

質量m,Mの球A,Bがある。

Aは速さv1で右向きに、Bは速さv2で左向きに運動していた。

これらが衝突したとき、衝突後の両者の速さを求めよ。

ただし反発係数をeとする。


衝突後の球の速さを求めたいとする。

このとき、反発係数が1でないのに力学的エネルギー保存則を使うのはNGである。

弾性衝突でないときは、エネルギーが保存しないためだ。

独学で勉強しているときに、上の問題を誤ってエネルギー保存則で解こうとしたとする。

すると出てくる答えは当然間違いだ。

だが、どこが間違っているのか誰も教えてくれない。

計算ミスをしたわけではないので、すぐには間違いに気付けないのだ。

「エネルギー保存則を使う」という最初の発想自体が誤りであったことに気づくのには時間がかかってしまう。

計算ミスならともかく、こうした理論的なミスに気づきにくいというのが独学のもう1つ怖いところである。

不適切な場面で物理法則を使ったところで、答えにたどり着けるわけがない。

それなのに一つ覚えで同じ公式ばかりを用いる。

こういう愚かな状況に陥りやすいというのが独学が困難な理由なのだ。

まとめ:独学の大変さ

ここまでの内容をまとめよう。

物理を独学で攻略するのが大変なのは、次の理由による。

  • 公式の暗記に走ってしまう
  • 法則を不適切な場面で使うなど、理論的な過ちを犯したときにすぐに気付けない

つまり、勉強の方向性を誤りやすいのである。

独学であるぶん、独りよがりになる可能性が高い。

これが、物理の独学に苦労する理由だ。

逆に、独学でなくとも上の方針を理解していない先生・講師の下で物理を勉強しても本質的な理解にたどり着けることはなく、いつまでたっても物理を理解できない。

指導者がいるから安心、というわけではないのだ。

大学入試の物理を突破できるか否かは、指導者がいるか否かではなくあくまで統一的な理解にかかっているのである。

独学の意義と方針

ここまで、物理を独学でクリアすることの大変さを説明してきた。

あなたはきっと、物理の勉強を不安に思っていることだろう。

だが、心配はいらない。

独学で物理を学ぶことには利点もあるし、正しい方針で学べば確実に成長できる。

独学でやる利点

困難ばかり説明してきたので、次は独学の利点だ。

最大の利点は、「誰にも負けない思考力が身につく」ということだ。

塾で物理を学ぶ場合と比較してみよう。

塾では、「ここは重要だから覚えておいてね」とか「この問題ではこの公式を使うのが便利だよ」というふうに先生から手厚く教えてもらえる

それはそれでありがたいことだが、手助けがあるということはそれだけ自律性が失われるということでもある。

塾で扱った問題の類題であれば容易に解けるだろうが、そうでないものに出会ったときに塾で育った受験生は困ることになる。

こんなの見たことない。どうやって解けばいいんだろう。

いままで教えてくれる先生がいたために自分で考えてこなかった。

だから自分で解決する力がないのである。

受験のプロに授業で教わっているため、問題が解けなかったらそのたびに教えてもらえる。

それは長所であると同時に短所でもあるのだ。

独学で物理を学んできた受験生は違う。

どんなも自分の力で方針を探り、攻略してきた。

したがって、たとえ初見の問題に出くわしても手探りで解決策を見つけることができる。

他者の支えなしで成長したのだから、そのぶん他の受験生よりも秀でている。

独学を達成すればこういう受験生になれるのだ。

第二に、塾では教えてくれない独自の見地を身につけることができる。

たとえば万有引力の法則とクーロンの法則は似た形をしている。

別の例で言えば、運動エネルギーとコンデンサの静電エネルギー、それにコイルに蓄えられたエネルギーも似た形だ。

これらの共通性は、塾の教材等ではなかなか言及されない。

統一的なものの見方に自分で気付ければ、塾の教材や有名な参考書よりもスマートで効率的な学習が可能になるし、公式を暗記する手間も大きく省ける。

まとめると、物理を独学で攻略する利点は

  • 一人で学んだぶん、誰にも負けない思考力が身につく
  • 独自のスマートな見地を獲得できる

ということである。

特に難関大志望者は、独学で物理を学べば大きな武器になるのは確実だ。

迷走しないために

独学は迷走する危険性をはらんでいるというのは先述の通りだ。

着実に学習して結果を残すために、受験生が意識すべき方針を示しておく。

まず第一に、公式の暗記に走らないということだ。

公式を単なる文字列として暗記しても意味がないというのは何度も述べてきた通りだ。

実際に問題を解くときにそれを使えるか否かが鍵になる。

第二に、個々の事象について解法を覚えるのではなくごく少数の大きな法則で物理を考えよう。

たとえば

  • 2つの物体が衝突する問題
  • 台車の上に台車が載っていて、間に摩擦が働いている問題

の2つについて別々の解法を覚えるのではなく、両者をまとめて「運動量保存則が成り立っている」というふうに統一的に捉えるのだ。

そうした方が他の問題への応用性も圧倒的に高い。

第三に、どういうときにどの公式が成立するのかを知ろう。

たとえばエネルギー保存則はいつどんな時でも成立するものではない。

物体の衝突で言えば弾性衝突でない限り運動エネルギーは保存しないし、摩擦があればまた事情が異なってくる。

他の法則についても、何の条件も考慮せずに公式を振り回しているといつか痛い目に遭うので注意。

独学の際は、これらを意識するよう心がけよう。

問題演習にあたって

方針を説明したところで、具体的な勉強法に入ろう。

教科書の使い方、問題演習の際の注意点、ノートの使い方を概説する。

教科書の使い方

覚える公式が少ないぶん教科書はないがしろにされがちだが、これは誤った判断だ。

公式の意味を理解し、その公式がいかに有力かを感じるために教科書は不可欠だ。

初見の分野については、いきなり問題を解かずまずは教科書を読むことから始めよう。

その際注目すべきは、どういう物理現象がどんな公式で説明できるのか、ということだ。

何度も言うが公式の文字列自体はさして重要ではない。

また、問題の答えも正直なところどうでもよい。

各々の公式が何を意味してるのかを最初に理解しよう。

ここでいう「意味」とは、

  • どういう物理量が登場しているか
  • それらがどういう関係性にあるか
  • その公式を使っていかに問題を解けるか

である。

これらに着目して教科書を読めば、次第に公式を意味とともに理解できる。

問題演習に際して

基礎の基礎を理解したら問題演習に入ろう。

最初は簡単な問題から始めるのが鉄則だ。

いま勉強した公式を使えばあっさり解けてしまうような問題が良い。

式1,2本でサクサク解ける問題はやりごたえがないかもしれないが、公式の意味や使い方を理解する上で欠かせないステップなのである。

逆にいきなり複雑な問題に着手してしまうと、いま自分が何の勉強をしているのか見失ってしまうので要注意だ。

難しい問題は後で解いていけば良い。

まずは簡単な問題を1問1問丁寧に解く。

教科書の例題や練習問題でもいいし、市販の平易な参考書でも良い。

焦らず、丁寧にやっていこう。

初歩的な問題が解けるようになったら、少しずつ状況を複雑にしていく。

たとえば単振り子の問題だったら、最初は地上で振り子を振動させていたのを今度は加速するエレベータの中で実験する問題に挑戦する、という感じである。

計算が小難しいものではなく、条件設定が少し複雑な問題をチョイスするのがコツだ。

計算が難しいだけの問題は、計算力は鍛えられるが物理の力に関係がないからだ。

こうして問題の複雑さを上げていけば、次第にいろいろな問題に対処できるようになる。

市販の簡単な問題集や定期試験の問題が解けるようになったら、基礎はバッチリだ。

その後はどんどん難しい問題集にチャレンジすると良い。

ノートの使い方

問題演習の際は必ず専用のノートを用意すること。

ノートの使い方には幾つか注意点がある。

まず、途中過程の数式は絶対に省略しないようにしよう。

物理では、出てきた答え自体が重要なのではなく、そこに至るまでの過程に価値があるのだ。

受験では都合上答えが採点の対象となるわけだが、学習の上で着目すべきは途中過程。

たとえば計算式をノートに書かないで答えだけ書いてしまったら、それが不正解だったときに困ったことになる。

計算式を書いていないので、どこかで計算ミスをしたのか、考え方自体が誤っていたのか、原因が全くわからないのだ。

自分がいかにして問題を解いたのかを明確にするのは、物理に限らず大切なことである。

途中式は絶対に書くよう心がけよう。

第二に、どういう物理法則を用いたのか必ずメモしよう。

たとえばエネルギー保存則を使ったのであれば式の近くに(エネルギー保存則)のようにメモしておくのだ。

これにより、自分が何を用いて式を立てたのか明瞭になる。

実際の試験答案でも、いま書いた式が何を意味しているのかを明記しておくことで、自分・採点者双方にとって読みやすくなる。

すぐに実践できることなので、忘れずにやってみよう。

第三に、ノートには図も書いておくことが重要だ。

問題文に図が添えてある場合であっても、必ずノートに図を描こう。

物理では図を書くというのが大変重要だ。

力学であれば、物体に働く力を矢印で図示したほうが圧倒的にイメージしやすくなる。

また、摩擦力など見落としやすい力も忘れずに済む。

ごちゃごちゃした設定の問題でも、図を書くだけで話を整理でき、簡単に解けるケースは山ほどあるのだ。

図は大きめに書くことを心がけよう。

また細かいデザインや装飾は全く不要なので、物理的にどういう状況なのかが過不足なくわかる作図をしよう。

こうすることで、問題の見通しが一気に良くなる。

  • 計算式は省略しない
  • どういう法則を使ったのか明記
  • 図を描く

これが物理のノートを書く際の注意点だ。

まとめ

物理を独学で攻略する勉強法ついて説明した。

方針を誤って勉強すると迷走しやすいのが物理の怖さだ。

だが逆に、正しい理念で勉強すれば独学は十分可能だし、塾で勉強している生徒を上回る学力を身につけることができる

公式の意味や使い方を着実に理解し、独学で物理の壁を突破してほしい。

そうすれば、物理が受験で大きな得点源になってくれる。

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