
私たち日本人の多くは、英語のリスニングが苦手だ。
それは、英語と日本語では作りが全く違うからだ。
語順も違う、音も違う、イントネーションも違う。
そして、日本で生活する限り英会話が出来なくても生活に困ることはないため、そもそも英語と触れる機会が非常に少ないことが大きな原因だ。
しかし英検やTOEIC、センター試験を受ける受験生にとって、リスニングは避けて通れない。
「リスニングが苦手」では済まされないのだ。
通常、英語耳をつくるには1000時間ものリスニングが必要と言われている。
しかし、毎日3時間リスニングを学習したとしても1年はかかってしまう。
他の教科の受験対策もしなければならない受験生にとっては、とてもそんな時間は確保出来ないだろう。
リスニングは短時間で習得出来るものではないが、正しく学べば1000時間もかからない。
ここでは、リスニングが苦手な人がやりがちな間違った勉強法と、苦手意識を払拭するための対処法をまとめていく。
もしあなたが、リスニングが苦手だ、リスニング対策をやっていない、やり方が分からない、という状態なら、この記事があなたの助けとなるだろう。
リスニングが苦手になる原因
まずは、なぜリスニングが苦手になってしまったのかをはっきりさせておこう。
原因が明確になっていれば、対処法も見つかるし、今後の学習意欲も沸く。
ネイティブの話すスピードについていけない、何を話しているのか聞き取れないなどがあるだろうが、ここでは更に掘り下げていこう。
考えられる主な原因はこの3つ、
- 耳が出来ていない
- 英語の音は学校の授業では教えてくれない
- そもそも、行っている勉強法、対策法が間違っている。
一つずつ詳しく説明していこう。
「耳」が出来ていない
一番の問題がこれだ。
聞き取れない、スピードについていけない、これはすなわち「英語慣れしている耳」がないということだ。
いくら単語や文法を知っていても、リスニングテスト中は文章が書いてあるわけではない。
リスニングテストで頼りになるのは耳だけだ。(選択肢を選ぶ際はもちろん速読力や読解力も必要となってくるわけだが、ここでは割愛する)
リスニングが苦手だという人は、リスニングする上で一番重要な「英語耳」がないという致命的な原因を抱えている。
英語の音は学校の授業では教えてくれない
あなたが初めて英語の授業を受けた時、(おそらく中学校からだろう)アルファベットの読み書きだったり、絵で単語を覚えたり、絵を見て簡単な対話を聞くなど、英語を身近に感じていくことからスタートしたのではないだろうか。
そしてある程度の基礎が身についてから、文法を詳しく習うことになる。
しかし学校の授業では、英会話に必須の「英語の音」を深く教えるべきなのだ。
例を挙げよう。
例えば、「What are you doing?」という英文。どの単語も中学1年で習う簡単な単語だ。
これを日本人が読むと、「ホワット アー ユー ドゥーイング?」となるのが一般的だ。
しかしネイティブスピーカーはこれらの単語を繋げ、「ワラユードゥーイン?」と発音する。
英文は圧縮され、doingのgが消える。
このような「英語の音のつながり」は、学校の授業では教えない。
学校の授業という限られた時間の中で、全ての技能を教え込むには時間が足りないのは当然だ。
もっと英語の発音やリスニング、会話などの授業が取り入れられていたら、我々はリスニングで苦労することはなかっただろう。
しかし、これは仕方のないことなので、自分の勉強で解決するしかないのだ。
そもそも、行っている勉強法、対策法が間違っている。
リスニング対策をしているのに結果がついてこないというのは良く聞く話だ。
これは単純に、勉強法、対策法が間違っている可能性がある。
文章を読んで問いに答えるリーディングやライティングとは違い、一度聞き逃したらどうにも出来ないのがリスニングだ。
成績が伸びないことでリスニングが嫌いになってしまう生徒も多い。
リスニング対策をする→点数が上がらない→リスニングが嫌いになる→リスニング学習がストレスになる。これでは負のスパイラルとなり、いつまで経っても聞き取れるようにはならない。
この記事を読んでしっかり正しい勉強法を知ろう。
間違った勉強法
次に、リスニングが苦手な人がやりがちな間違った勉強法を3つ紹介する。
これは苦手になる原因に付随してくるものであるため、あなたもこんな間違いをしていないか、確認してみてほしい。
そして、ここに記してある勉強法を実施しているのではやめて直ちに正しいリスニング対策を行おう。
無意識にきいている
あなたはただやみくもに音声を聞いていないだろうか?
何かをしながら、英語の音声をBGMのように流しているだけでは効果は生まれない。
無意識に聞くことを「ヒアリング」と言い、英語耳が出来ていない状態でヒアリングをしても身にならないのだ。
例えば「スピードラーニング」という英語の教材が一時期はやったが、これもやはり「ヒアリング」にあたる。
赤ちゃんは何もせずに自然に英語を話すことができるようになるという理屈の元つくられたのが「スピードラーニング」である。
しかし、アメリカの赤ちゃんなどは四六時中英語を聞くことができる環境にいるのに対し、我々は常にこれを流しておくわけにはいかないだろう。
また、赤ちゃんといえども、我々が漢字を習うのと同じように小学校から様々な英単語を学んで語彙力を増やしている。
決してヒアリング自体に効果がないと言っているわけではないが、このような例をもとに考えると、ただ英語を流すだけという勉強法は決して効率のよいリスニング対策とはならない。
ヒアリングを行う前に、意識して聴くリスニングが出来るようになっているかがポイントだ。
音声を聞いた後、日本語訳も一緒に聞いている
英語の音を聴くのは英語耳を作るうえで最も重要だ。
きっとあなたも参考書についてくるCDを聴いているのではないだろうか?
しかし、英文の後に和訳が収録されているものははっきり言っておすすめしない。
耳が慣れていない状態で和訳を聴くのは非常に危険だ。
「聴く練習」になっていないからだ。
英文が聞き取れていなくても、和訳を聴けばもちろん意味は分かってしまう。
そして日本語の意味が分かれば満足してしまい、英文に対しての意識はそこで消えてしまう。
つまり、「学習した気になっている」だけなのだ。
これではリスニング力の向上は見込めない。
基礎を定着させるためには「聴く練習」を繰り返す、という事を覚えておこう。
英文を聴いて和訳しようとしている
これもよくある間違いだ。
英語の音声を聴き和訳しようとしてしまうのは、日本語を話す私たちにとって当たり前のように思われる。
しかし、実際英文と英文の間に時間はほとんどない。
そんな中で一文一文和訳してしまうと、和訳している間に次の文が流れて聞き取れない。
どこかでつまずいてしまうのだ。
また、実際の試験では、音声が流れ終わってから、10秒ほどしか解答時間がないのだ。
そのたった10秒の間に解答の選択肢を読み、解答用紙に記入しなければならない。
和訳しようとしていたら時間が足りないのは明白だ。
正しい勉強法
では、これらのことを踏まえ、効果的なリスニング対策と学習方法について説明していこう。
リスニング力の向上は2~3日のように短期間で習得出来るものではない。
あなたがリスニングテストでほとんど聞き取れないのであれば、まずは基礎を固めるために最低3ヵ月は覚悟しよう。
しかし安心してほしい。
基礎がしっかり出来るようになれば、これから説明する学習方法にも対応出来るようになる。
そのために毎日リスニングと向き合い、一刻も早く基礎基盤を固めよう。
英文をイメージ化する
まずは英単語を暗記し、分からない単語がほとんどない状態になってからリスニングを始める。
簡単な英文や短い英文を聴き、和訳をせずに聴いた英文をイメージ化出来るようにしよう。
例えば、
この英文を「車/ガレージの中/私の → ガレージにある車は私のです。」などと訳さず、「ガレージの中にある車を見ている自分」を想像(イメージ化)出来るようにすることだ。
いきなり難しい英文や長い文章だと、イメージ化はおろか英文自体が理解出来ないストレスで、リスニングがマイナスイメージになってしまう。
とにかく簡単なものから始めてみよう。
出来るようになるとリスニングがとても楽しいものとなる。
英語のリズムを身につける、「オーバーラッピング」
文章を見ながら音声に合わせて音読することをオーバーラッピングと言う。
音声が終わってからではなく、音声に自分の音読を被せるのだ。
いくら聴く練習ばかりしていても、実際に自分で声を出さなければその音声スピードやリズムは測り知れない。
英語には、強弱やイントネーション、音のつながりなど、独特のリズムがある。
音声に合わせてオーバーラップすることで、その独特のリズムを身につけることが出来るのだ。
英語のリズムを習得することで英語の聞き取りはかなり楽になる。
一人で英文を音読するよりも、実際の音声スピードに合わせることで音のつながりも分かるようになるため、おすすめの勉強法だ。
ディクテーションを取り入れる
リスニングの学習をしていて最も厄介なものは、「集中力の欠如」だ。
人間は何かに集中している時に、違う物を見たり、違う音を聞いたりすると一気にその集中力はなくなってしまう。
せっかくリスニングの学習をしているのに集中力が欠けたら英語の音は入って来ない。
そこでおすすめなのがディクテーションだ。
これは、音声を聴きながら聞こえてきた英語を一語一語拾っていく練習だ。
この時、英文は見ないで行う。
ディクテーションを行うことで、聞き取れなかった単語や、聞き間違えていた単語が明確になる。
そして聞こえてきた英語を書き留めなくてはならないため、集中力も跳ね上がるのだ。
また、ディクテーションをするなら、手書きで書くよりもパソコンでタイピングした方が速いし効率も上がる。
もしあなたがブラインドタッチや速いタイピングが出来ないのであれば手書きで構わないが、タイピングは将来的にも使える方が良い。
時間を取られ効率が下がってしまう場合は、ディクテーションは手書きにし、受験が終わったらタイピングはマスターしておこう。
リスニング力を身につけ、ヒアリング効果を受け取る
2.1で説明した通り、リスニングが定着していない状態で英文をヒアリングしていても効果は生まれない。
この2つの元となる動詞は、ListenとHearで、どちらも「きく」ということだ。
よって混同してしまう人が多く見受けられる。
しかしこの2つは同じ「きく」でも意味が違う。
- Listen…意識して自発的に「聴く」こと。
- Hear…意識しなくても耳に「聞こえる」こと。
このように説明するとヒアリングは全く意味のないものに見えるかもしれない。
しかひ上記に書いたような3つの勉強法で、十分にリスニングの練習をしたうえでヒアリングをすることと大きな効果がうまれる。
英文が英語のまま受け入れられるようになって初めて、ヒアリングに効果が生まれる、ということを覚えておこう。
それは、リスニングで分かるようになると、ヒアリングした時(無意識に聞こえた時)にその内容が頭に入ってくるようになるものだ。
この段階になれば、ヒアリングしているだけでいつの間にか英語が聞き取れるようになる。
誰でも、どうしても勉強する気になれない時や気分転換をしたい時がある。
そんな時はリスニングの練習が十分できているのであれば、音楽代わりに英語の音声を流して英語耳を養おう。
おすすめ教材
さて、これらの勉強法についてだが、具体的に何を教材にすれば良いのだろうか?
受験はお金のかかるイベントだ。
出来ることならなるべくお金をかけずに成績を伸ばしたい。
でもお金をかけずに効果が上がる教材なんてあるのだろうか?
そこで、ここでは無料で学べるおすすめ教材を紹介しよう。
教科書の音読
学校の授業で使っている教科書を音読することもリスニング対策に有効だ。
声に出すことが結果として英語耳を作ることは前述した通りだ。
教科書には授業で習うレベルのものが書かれており、易しい素材となる。
必要な単語も書かれているため、その教科書に書かれていることが分からない、ということはないだろう。
ここで、注意しなければならないのが、音読するときは必ず正しい発音ですることだ。
できればCDを聞いてそれを聞きながら上記で紹介した「オーバーラッピング」
易しい英文を学ぶには、学校の教科書も重要なリスニング素材となることを理解しておこう。
英語のテレビやYouTubeから見て学ぶ
テレビやインターネットでは無料で観られる素材が沢山ある。
子ども向けアニメならスピードもかなりゆっくりなので、聞き取れないということはまずないだろう。
下記にNHKゴガクのテレビとラジオの番組一覧を紹介しておく。
テレビ番組
【ボキャブライダー ON TV】
奥深いウンチクや豆知識とともに、身近な英単語をアナタに伝授。
【おとなの基礎英語】
2012年度にスタートした「オトキソ」、今年度の舞台はオーストラリア。
雄大なオージーの大地を舞台に旅先で役立つ英会話フレーズを学んでいきます。
【ニュースで英会話】
NHK WORLDの英語ニュースを題材に、旬な英語表現を学ぶ番組。
ラジオ、WEBと連動した「クロスメディア」で英語力アップ!
ラジオ番組
【エンジョイ・シンプル・イングリッシュ】
1日5分、英語を聞いて、読んで、楽しむ。英語を英語のまま味わう習慣を身につけてください。
【ラジオ英会話】
機能別・状況別の月テーマに沿ったダイアログを通して、日常生活に役立つ英語らしい表現を学びます。
【英会話タイムトライアル】
言いたいことを簡単な表現でとっさに言える力(=英語の”瞬発力”)を鍛えるトレーニングや、ラジオを通して模擬会話を行う”対話カラオケ”で、「英語で話す力」を身につけましょう。
【攻略!英語リスニング】
リスニングの力を養い、総合的な英語力を身につけることを目的とした中上級者向けの講座です。
【入門ビジネス英語】
国際ビジネスパーソンが避けて通れない”ミーティング”、”同僚とのコミュニケーション”、”プレゼンテーション”の3大場面でビジネス英語の基礎を学ぶ。
【実践ビジネス英語】
グローバル時代に対応できる高度な英語でのコミュニケーション力を育成する、上級者向けの講座です。
【英語で読む村上春樹】
英語に訳された村上春樹の作品朗読を通して、世界的な文学者・村上春樹の作品の魅力を再発見していく講座番組。
【ワンポイント・ニュースで英会話】
NHK WORLDの英語ニュースを題材に、旬な英語表現を身につけ、その話題について発信する力を養う番組です。
常にテレビを見たりラジオを聴いたりというわけではなく、勉強と息抜き、両方必要な時にこの方法はおすすめだ。
英検の過去問から学ぶ
「公益財団法人 日本英語検定協会」のHPから、リスニングの過去問が聴ける。
実際に試験に出た問題のため、自分の実力に見合ったレベルの問題が聞き取れればかなりのリスニング対策となる。
英検と受験英語のリスニングは出題傾向も似ており、実践レベルで役立つだろう。
英文も書かれているため、ディクテーションをするには特におすすめだ。
まとめ
いかがだっただろうか?
リスニングが苦手な理由やその対処法は理解出来ただろうか?
英語の試験を受けるにあたり、必要不可欠なリスニング技能。
海外旅行や留学する際にも必要となってくる技能のため、早いうちにリスニングは習得しておいた方が良いだろう。
肝心なのは学習する順番だ。
いきなり長い英文を聴いても理解出来ずに苦しむことになるだろう。
英単語を覚え、簡単な英文など、意識して音を聞くことで土台がしっかりする。
基礎が固まれば、あとは正しいリスニング学習をすることで必ずリスニングの成績は伸ばせる。
結果が出るようになればリスニング学習も楽しくなるだろう。
是非、今日からリスニングの学習と向き合ってみてほしい。
saikyousan_omega
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